「僕に見せ付けてるんでしょ?
 由梨絵さんが僕を愛してるって」
拗ねた口調でそう言う和真に「そうよ? いやなの?」と聞いてみる。
「嫌じゃないよ。
 幸せすぎて、何度もイっちゃいそうになる。
 それなのに由梨絵さん、あと少しのところでやめちゃうから」
「感じ過ぎて苦しそうにしてる和真くんが好きなの」
くすり、と笑って答えると「ホントに由梨絵さんてドSだよね」などと憤慨した顔。
「和真くんもでしょ?」
「恥ずかしがって僕を欲しがる由梨絵さんが好きだよ」
体を起こして、またゆっくりと腰を動かす。
和真は直ぐに呼吸を乱して「僕を愛してくれてる由梨絵さんも好き」と言った。
「今度はやめないで」
「どうしようかな」
「やだ…由梨絵さんの中でイキたい。
 イキたいよっ」
苦しげに眉根を寄せる和真が、とてもかわいく見えた。
「じゃあ…今度は、一緒に……」
直後、和真はとても嬉しそうに微笑んだ。
「ホントに僕のこと、愛してる?」
あたしを見上げて、和真は感じまくった声でそう聞いた。
「愛してる」
「お父さんよりも?」
あたしはためらいもなく「そうよ。キヨヒコより」と即答する。
あたしのときめきの理由は、恐らくそう言うことなんだろうと、あたし自身が納得していたのだ。
あたしは和真を愛している。
多分、一緒に居た時間はずっと長かったキヨヒコよりも。
キヨヒコも愛していたけれど、あたしの向ける愛情の深さは、和真が凌駕しているのだ。
あたしたちが出会った時に負っていた心の傷の深さが、あたしたちの心を繋ぐかすがいになっているのかもしれないけれど。
普通の恋人同士のような、気軽な始まりではない和真には、今まで経験したことが無いほどの愛情を感じていた。
あたしの言葉を聞いた和真は、一瞬、泣きそうな顔をした。
先ほどと同じ答えでも、今度はお互いが繋がり合っている。
「すげー…幸せ……」
和真はそう言うと、あたしを感じることに集中し始めた。
あたしをじっと見上げながら、時々何かに耐えるようにぎゅっと目を閉じる。
薄く開いた口からは絶えず熱い息が吐き出される。
うわごとのようにあたしの名前を呼んで、思い出したようにあたしの胸に指を伸ばす。

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